4.2 エネルギー蓄積
4.2.1 概要 エネルギー変換の立場からみると、生物の大きな特徴は、通常の機械システム(熱機関)とは異なり温度勾配の存在なしに常温でエネルギーの変換を行う点にある。かわりに細胞の膜構造を利用して濃度の勾配を維持し、化学的なエネルギーのやり取りを行っている。本節では、はじめに細胞膜における輸送系について検討する。 生命のエネルギーの獲得・蓄積方法の特徴としては、具体的に、 ? 濃度勾配による電気化学ポテンシャルを利用している。 ? ATP(アデノシン三リン酸)の化学エネルギーを共通的のものとして利用している。 が挙げられる。ここでは、前者の例として「光駆動プロトンポンプ」、輸送のを、後者として「ATP合成(酸化的リン酸化)酵素」を例にとり、そのメカニズムを示す。 4.2.2 拡散−輸送 (1) 生命エネルギーの概要 地球上の生物紬胞の多くは、膜構造をとっている。したがって、エネルギーや物質のやり取りは、膜を介して行われている。これらは、図4−5に示すように、?電子輸送鎖、?光駆動プロトンポンプ(4.2.3項参照)、?ATPアーゼ(4.2.4項参照)などがある。 図4−5 細胞における拡散・輸送の仕組み
なお、これまでに見てきたように、生体内では、プロトンをはじめとして各種のイオンが重要な働きをしている。これらのイオンの能動的な輸送形態としては、 ? 膜中のチャンネルあるいは孔隙を直接通過 ? 担体の往復運動による輸送 ? 近接するサイト間を経由した輸送 がある。
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